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遺産分割のやり直し
➁ 分割協議によって約束された債務の不履行を理由(例えば、遺産分割にあたり親の介護をすることを条件として分割協議をしたが、その後介護をするということを反故にされてしまったなど)として、通常の契約の解除(=契約が有効に締結された後に、契約当事者の一方だけの意思表示によって、契約関係を遡及的に消滅させること)のように分割協議を解除する
➂ 詐欺・錯誤(=表示上の効果意思【一定の法律効果の発生を欲する意志】に対応する内心的効果意思が存在しないことを表意者自身が知らないこと、『例』表示された効果意思と表意者の真に意図するところに食い違いがある場合)など瑕疵(=「きず」という意味で、法律上何らかの欠点・欠陥があることを表すために、よく用いられる語)ある意思表示・意思の欠缺(けんけつ)(=表示行為から推定される効果意思に対応した内心の効果意思「真意」が欠けている)を理由として、分割協議の取消し・無効を主張すること
について以下のように取り扱われます。
➀は、最高裁判決で、共同相続人が、既に成立している分割協議について、その全部または一部を全員の合意により解除した上で、改めて分割協議を成立させることを認めています。
但し、遺言書と異なる内容の分割協議は、相続税の申告前に行われなければなりません。既に遺言書に基づく相続税の申告がなされていた場合、法的安定性を求める立場から、その後に分割協議をすれば贈与課税の問題が発生します。
➁は、最高裁判決で、複数の者の合意によって成立した分割協議を、一部の者の債務不履行を理由として覆すことは認めていません。
なお、民法541条(催告の解除)で債務の不履行について「当事者の一方がその債務を履行しない場合」のみと定めていますが、債務不履行の程度や態様を一切問わずに催告解除をすることができるとする趣旨ではなく、不履行の程度が軽微である場合や要素たる債務の不履行ではなく付随的な債務の不履行である場合には、催告解除は認められないとされていますが、最高裁判決はこの改正により左右されるものではないと解されるようです。
つまり、債務不履行があった場合には解除権が発生しますが、遺産分割のやり直しを最高裁が認めていませんから、税法上もまた同じということです。
➂は、意思表示の瑕疵については、遺産分割協議は契約の一種であり、協議における合意を構成する当事者の意思表示については、錯誤、詐欺又は強迫などに関する民法総則の規定が適用されます。従って、当事者の意思表示に要素の錯誤がある場合には分割協議は無効とされます。
また、一部の遺産の存在を知らずに遺産分割を行ってしまった後に新たな遺産の存在が判明した場合、通常ならば、新たな遺産についてのみ分割協議を行います。それを当初の分割協議の効力を認めず、遺産全体の分割協議のやり直しをするためには、新たな遺産の割合が当初の分割協議の対象となった遺産に比して著しく大きいだけではなく、錯誤の事実を明示する必要があります。
税法上は、遺産分割のやり直しを原則認めていないと考えられます。
国税通則法第23条2項の更正の請求の特則の規定におけるやむを得ない理由のうち契約の解除については、通則令第6条1項2号に「解除権の行使によって解除され、若しくはその契約の成立後生じたやむを得ない事情によって解除され、又は取り消されたこと」と規定しています。
その一方で「課税負担の錯誤に関しては、当該遺産分割が無効であることを主張することはできないのが原則であるが、更正請求期間内にされた更正の請求を認めても弊害が生ずるおそれがない特段の事情がある場合には、例外的に認められる場合がある」という裁判例(平21.2.27東京地裁)もあります。
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