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遺言の撤回
父は、2007年に自筆証書遺言を作成し、2014年に死亡しました。遺言書には「父所有の土地及び建物を妻に相続させる」と書かれていましたが、父は2010年に私の弟に遺言に書かれていた土地・建物を生前贈与していまいた。この遺言の効力はどうなるのでしょうか
民法第1022条に「遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部または一部を撤回することができる」と規定しており、撤回は遺言の方式に従って行うことが要件です。
この遺言の撤回は、自筆証書遺言、公正証書遺言など民法で定められた方式によることが必要ですが、撤回する遺言と同じ方式で新たな遺言をすることまで求められていません。つまり、遺言の方式は最初の遺言の際の方式と異なっても構いません。
また、1026条には「遺言者は、その遺言を撤回する権利を放棄することができない」とあります。
➀ 1023条1項で「前の遺言と後の遺言が抵触(=2つの遺言の内容が両立できない)するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす」とし、
➁ 2項において「前項(第1項)の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用(=ある事項に関する規定【今回の場合は第1項】を、それに類似するが異なる事項について、必要な変更を加えた上であてはめること)する」とし、
➂ 1024条では「遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言の撤回をしたものとみなす」と規定しています。
⓵のケースでは、内容が抵触する遺言書が複数ある場合です、この場合、自筆証書遺言よりも公正証書遺言書が優先するということはありません。作成した日付の新しいもの(後の遺言)を有効としますが、あくまでも抵触する部分についての措置ということです。また、複数ある遺言書のうち自筆証書遺言のみが検認の手続が必要です。
➁は今回のケースですが、遺言者(父)の最後の意思を尊重して遺言の撤回がされたものとみなすということで、遺言書の抵触する部分については無効となります。つまり、遺言内容と抵触する処分を行った場合は、その時点でその行為の内容(贈与、売買、交換等【今回の場合は贈与】)に従い課税されます。
➂のケースですが、仮に遺言者が所持する公正証書遺言を破棄したとしても、その原本は公証役場に存在しますので破棄したことにはなりません。
1025条の本文には「前3条の規定(1022条から1024条までの規定)により撤回された遺言は、その撤回の行為が、撤回され、取り消され、又は効力を生じなくなるに至ったときであっても、その効力は回復しない」と規定しています。つまり、一度遺言の撤回がされ、その後その撤回した部分を撤回しても、最初の遺言書の撤回された部分の効力は原則復活しません。
また、遺言の方式に従って遺産の全部または一部の遺言の撤回することのみを記載した遺言がある場合は、遺言書の全部を撤回をされたときは遺産分割協議によって遺産分割を行い、一部撤回されたときは撤回されなかった部分は遺言書の記載に従い、撤回された部分は無効として、遺産分割協議を行います。
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