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私道の用に供されている宅地、減額の要否と程度
共同相続人である上告人【上告を提起した者、原審における当事者またはその承継人】らが、相続財産である土地の一部(各歩道状空地)につき、財産評価基本通達の24に定める私道の用に供されている宅地として相続税の申告をしたところ、所轄税務署長から、これを貸家建付地【借家権の目的となっている家屋の敷地の用に供される宅地】として評価すべきであるとしてそれぞれ更正処分【納税申告による課税標準等又は税額等が国税に関する法律の規定に従って計算されていないときや課税標準等又は税額等が税務調査したところと異なるときには、税務署長はその調査により、課税標準等又は税額等を確定する処分】及び過少申告加算税賦課決定処分(本件各処分)を受けたため、被上告人を相手に、本件各処分の取消しを求める事案です。
最高裁判決では、相続税法第22条は、相続により取得した財産の価額は、その財産の取得の時における時価による旨を定めているところ、ここにいう時価とは、課税時期である被相続人の死亡時におけるその財産の客観的交換価値をいうものと解される。
そして、私道の用に供されている宅地については、それが第三者の通行の用に供され、所有者が自己の意思によって自由に使用、収益又は処分をすることに制約が存在することにより、その客観的交換価値が低下する場合に、そのような制約のない宅地と比較して、相続税に係る財産の評価において減額されるべきものということができる。
そうすると、相続税に係る財産の評価において、私道の用に供されている宅地につき客観的交換価値が低下するものとして減額されるべき場合を、建築基準法等の法令によって建築制限や私道の変更等の制限などの制約が課されている場合に限定する理由はなく、そのような宅地の相続税に係る財産の評価における減額の要否及び程度は、私道としての利用に関する建築基準法等の法令上の制約の有無のみならず、当該宅地の位置関係、形状等や道路としての利用状況、これらを踏まえた道路以外の用途への転用の難易等に照らし、その宅地の客観的交換価値に低下が認められるか否か、また、その低下がどの程度かを考慮して決定する必要があるというべきである。
これを本件についてみると、各歩道状空地は、車道に沿って幅員2mの歩道としてインターロッキング舗装【インターロッキング(interlocking)とは“かみ合わせる”という意味で、荷重が掛かったとき、ブロック間の目地に充填した砂によりブロック相互のかみ合わせ効果(荷重分散効果)が得られる舗装ブロック】が施されたもので、いずれも相応の面積がある上に、各共同住宅の居住者等以外の第三者による自由な通行の用に供されていることがうかがわれる。
また、各歩道状空地は、いずれも各共同住宅を建築する際、都市計画法所定の開発行為の許可を受けるために、市の指導要綱等を踏まえた行政指導によって私道の用に供されるに至ったものであり、各共同住宅が存在する限りにおいて、上告人らが道路以外の用途へ転用することが容易であるとは認め難い。
そして、これらの事情に照らせば、各共同住宅の建築のための開発行為が被相続人による選択の結果であるとしても、このことから直ちに各歩道状空地について減額して評価をする必要がないということはできないと判示しました。
財産評価基本通達24(私道の用に供されている宅地の評価):一定の評価の方式により計算した価額の100分の30に相当する価額によって評価する。この場合において、その私道が不特定多数の者の通行の用に供されているときは、その私道の価額は評価しない。
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