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相続分の指定・持戻し免除と遺留分侵害額請求
父は先妻との間に私と弟が2人おり、後妻との間に2人の子がいます。父は生前に後妻の子に対し、生計の資本として、株式、現金、預貯金等の贈与をするとともに、父の相続開始時においてこの贈与に係る財産の価額を相続財産に算入することを要しない旨の意思表示をしました。
また、後妻に相続分として2分の1を後妻の子にそれぞれ4分の1、私と弟2人には相続分を零と指定する旨の公正証書遺言をしました。そして、その父が今年2月に死亡しました。
そこで、私と弟2人は相手方に対し遺留分侵害額請求権を行使する旨の意思表示をしました。この場合どうなるのでしょうか。
判例(※1)では、まず民法第902条(遺言による相続分の指定)では、相続分の指定は遺留分に関する規定に違反することができないと規定されており、特定遺贈や財産全部の包括遺贈を減殺したときは、減殺により取り戻した財産は、遺留分減殺請求をした権利者に帰属し、遺産分割の対象となる財産としての性質を有しないと解されています。
一方、今回のケースである相続分指定に対して遺留分減殺請求がされたときは、遺留分権利者が遺留分に相当する相続分を回復し、共同相続人間の相続分比率が修正されることになります。そして、この修正された相続分に従って遺産の分割の手続がされることになります。
この相続分指定に対して減殺請求がされた場合、どのようにして相続分の指定が修正されるかということですが、「相続分の指定が特定の財産を処分する行為ではなく、相続人の法定相続分を変更する性質の行為」と最高裁が考慮事項としていますことから、遺留分を超過する法定相続分の額を基準としました。
そして、遺留分減殺請求により特別受益に当たる贈与についてされた持戻し免除の意思表示が減殺された場合、持戻し免除の意思表示は、遺留分を侵害する限度で失効し、その贈与に係る財産の価額はその限度で遺留分権利者である相続人の相続分に加算され、その贈与を受けた相続人の相続分から控除されるのが相当であるとされ、それは、持戻し免除の意思表示がその限度で失効した場合にその限度でその贈与に係る財産の価額を相続財産とみなして各共同相続人の具体的相続分で算定されると、その対象額が共同相続人全員に配分され、遺留分権利者において遺留分相当額の財産を確保することにはならないからとされました。
なお、民法改正により、相続分の修正ではなく、遺贈の場合と同様に遺留分権利者に金銭請求権を認めるものとし、相続分の指定を受けた相続人の債務負担は遺留分を侵害するところを限度とされます。
この法律の改正施行は、令和元(2019)年7月1日からです。
(※1)平成24年1月26日 最高裁判決
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